葬儀や埋葬に対する価値観が多様化する中で、必ずしも先祖代々のお墓に入るというのが、理想の形ではないという考え方をする人も増えています。
海洋散骨は、そういった新しい価値観に合う方法として注目されている方法です。
ここでは、海に散骨をする際にはどのような準備が必要か、どんな理由で海洋散骨を選ぶ人が多いのか、など海洋散骨に関する情報を幅広くお伝えしてゆきます。
海洋散骨をするうえでの参考になれば幸いです。
海洋散骨が選ばれる理由とは？
海洋散骨の場合、故人の遺志を尊重するという理由から、海洋散骨を選択する人が多くみられます。
「死んだら海にかえりたい」という漠然とした願いを持つ人はそれなりの数いるものですが、散骨を実行してもらうためには、その意思をしっかり周知しておくことが必要です。
エンディングを意識して、故人が家族にはっきり散骨を希望する旨を伝えていた場合は、海洋散骨を家族が迷わずに選択しやすくなります。
「海に還りたい」と故人が発言していた機会が多かったことを振り返って、家族が海洋散骨を検討し始めるケースもあります。いずれにせよ、故人の遺志が、海洋散骨をする理由になる事例はかなり多くみられるものです。
別の理由から、海洋散骨を選択する人もいます。お墓を維持するのにはかなりお金が掛かるものですが、散骨であれば、そのあとに何かを維持するための費用が必要となりません。
お墓に納骨の費用を安く抑えるという理由や、墓じまいを理由に散骨を選択するケースもあります。経済的な負担が少ないところ、お墓を持たなくて良いところは、散骨ならではの魅力です。
宗教に縛られない方法として散骨を選択するケースもみられます。特定の宗教による弔いの方法を避けたいと考えた結果、散骨という方法にたどり着いたという人が、それなりの数いるものです。
海洋散骨であれば、何かお経を唱えたり、特定の祈りを捧げたりするわけではなく、ただ思いを込めて海に骨をまくという行為を行うだけです。
散骨のなかでも、特に海洋散骨が好まれる理由としては、海という壮大な自然空間に故人の骨を還すことで安堵感を感じられること、家族が参加して散骨するなど故人を偲ぶ思いが伝わる方法で散骨しやすいことなどが挙げられます。
海洋散骨の流れを知りたい
海洋散骨を希望する場合、どのような流れで準備を進めればいいのでしょうか。
海洋散骨は、厚生労働省が定めた「散骨に関するガイドライン（散骨事業者向け）」や、「墓地、埋葬等に関する法律」、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」といったさまざまな法律やガイドラインを遵守して行う必要があります。
それらの法律を全て理解して個人で海洋散骨を実施するのはきわめて難しく、船やクルーザーなどを用意するのも大変なものです。海洋散骨を散骨の専門業者に任せる人が多いのは、そういった理由からです。
散骨を希望する人が増える時代の流れのなかで、散骨を請け負う業者の数も増えてきました。数ある業者のなかからどの業者を選べば良いか、という選択が難しいと感じることもあるでしょう。
資料を取り寄せたり、実際に話を聞いたりしたうえで、適した業者を選ぶようにしてください。散骨場所がどのような場所に設定されているか、という点は、業者選びの段階でしっかり注目しておきたいポイントです。
故人が長く暮らしたエリアにある馴染みのある海、旅行でよく遊びに行っていた思い出のある海、など何らかのつながりが感じられる海を散骨場所に選ぶのがおすすめです。
サービス内容についても、業者によって差がみられるため、じっくり比較検討して利用する業者を決めてください。
散骨業者を選定できたら、散骨をするプランや、オプションサービスの利用の選択をする段階に入ります。海洋散骨とひと口に言っても、その方法にはいくつかの選択肢があります。
費用面を抑えて海洋散骨を実施したい場合、遺族が海まで行って散骨する方法ではなく、遺族に代わって業者が散骨を行う委託散骨、ないし代理散骨と呼ばれる方法がおすすめです。
代理散骨であれば、比較的費用の負担はかからず済むでしょう。家族で散骨をしたい場合は、家族だけで船を一隻チャーターしてプライベートな空間で散骨を行う個人散骨の方法と、ほかの家族と同じ船に乗り合わせて散骨をする合同散骨の方法がある場合も。
個人散骨は、故人をよく知る人だけで散骨をできるので、故人を偲ぶ思いを大事にしたいと考えている人におすすめです。費用面では、個人散骨がもっとも高くなる傾向があり、数十万円程度かかるケースが多くなります。
チャーターする船のサイズやオプションによっても、必要な費用が変わってきます。合同散骨は、家族で散骨をしたいという願いを叶えつつ、ほかの家族と乗り合いで船を利用することで、費用を比較的抑えられるでしょう。
散骨に向けた準備として必要となるのが、粉骨です。火葬後の焼骨をそのまま撒いてしまう行為は、遺体遺棄罪にあたり、罪に問われてしまいます。
遺骨を粉末状にすることで、法律に則った形で散骨が可能となりますので、粉骨はきわめて大事なポイントとなります。
骨を砕くこと自体はさほど力を要する作業ではないものの、故人の骨を遺族自らが砕くことに対しては、抵抗を感じる人が多くいることでしょう。
散骨業者のオプションサービスでは、粉骨を請け負ってくれるところがありますので、便利なサービスを利用して、つつがなく粉骨を用意してください。
海洋散骨の当日の流れとしては、まず船で散骨場所まで向かいます。
目的の場所に到着したら、遺骨を海へと散骨します。散骨後は、お酒を献酒し、花びらを献花して、故人を偲ぶ時間を持ちます。
すぐにその場を立ち去るのは忍びないという理由から、散骨場所を3度ほど旋回してから、最後のお別れをする時間を迎えるという演出をしている業者もみられますので、そういった点にも注意して業者を選ぶといいでしょう。
故人の旅立ちを祈って黙とうを捧げたら、陸に向かって船を進めます。
まとめ
経済的な理由や故人の遺志を尊重したいといった理由から、海洋散骨を選択する人が増えつつあります。海洋散骨は、法律やガイドラインに則って行う必要があり、専門業者に依頼して行うのが安心です。
家族で散骨をする方法のほか、業者に代理で散骨をお願いする方法もあります。複数の方法のメリットやデメリットを比較検討したうえで、適した方法を上手に選ぶようにしましょう。